渡部稔教授らの論文が英国総合科学雑誌Natureに掲載されました。

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  平成28年10月20日付の英国総合科学雑誌Natureに、徳島大学理工学部(大学院総合科学研究部?教養教育院)の渡部稔教授を含む、国際アフリカツメガエル?ゲノムプロジェクト?コンソーシアムの新老虎机平台が発表されました。

アフリカツメガエルは1950年代から現在に至るまで、動物の体作りの仕組みや細胞の性質を調べる上で非常に有用な実験モデ ル動物として使われてきました。2012年に山中伸弥博士と共にノーベル生理学?医学賞を受賞したジョン?ガードン博士はこのカエルを用いて、「細胞の初期化」を初めて実験的に示したことで有名です。しかし複雑なゲノム構造のため、アフリカツメガエルは主要モデル生物の中で、唯一ゲノム解読が行われていませんでした。しかしながら主要モデル生物として生命科学の発展に不可欠であること、また脊椎動物の初期の進化の過程において起きたとされる2回の全ゲノム重複に重要な示唆を与えることから、2009年に日本と米国で期を同じくして独立にプロジェクトチームが立ち上がり、全ゲノム解読が始まりました。

約7年間の共同研究の結果、2種類の祖先種が雑種交配して全ゲノムが重複したとされるアフリカツメガエルの複雑なゲノム(異質四倍体ゲノム)の全構造を明らかにしました。さらにアフリカツメガエルのゲノム中にすでに絶滅した祖先種から受け継いだ2種類のゲノム(サブゲノム)を特定することに成功し、約1800万年前の雑種交配と全ゲノム重複の後(異質四倍体になった後)にゲノムがどのように進化したかを初めて明らかにしました。

全ゲノム情報の利用は多岐に渡ります。アフリカツメガエルはこれまでもモデル生物として、胚の発生や細胞の機能などにおける遺伝子の役割やその分子メカニズムの解析に使われてきましたが、今回の研究で得られた全ゲノム情報を用いることで、さらに多くの知見がもたらされると期待されます。例えば、遺伝子を改変する「ゲノム編集」という技術が近年注目されていますが、全ゲノム情報を基にこの技術を使えば、任意の遺伝子を改変してその遺伝子のもつ役割を解析することができます。アフリカツメガエルを用いたこれらの解析は、ヒトの遺伝的疾患の診断や治療などに役立つものであり、生命科学の発展に大きく貢献するものです。

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図:アフリカツメガエル成体メス。このカエルは2種類の祖先種が交配したのちに全ゲノムが重複して生じたと考えられています。
今回の研究では複雑な構造を持つアフリカツメガエルのゲノムを解読し、それぞれの祖先種由来の染色体を同定することに成功しました。

■雑誌情報
doi:10.1038/nature19840
タイトル:Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis(異質四倍体であるアフリカツメガエルXenopus laevisのゲノム進化)
著者:この論文には合計74名の著者が含まれます。そのうち日本人の著者は18機関、23研究室(海外を含む)からの30名です。
雑誌:Nature, vol.538, pp336–343, 2016
URL:Paper, http://www.nature.com/nature/journal/v538/n7625/pdf/nature19840.pdf
News & Views, http://www.nature.com/nature/journal/v538/n7625/pdf/538320a.pdf

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