徳島大学?高知大学?香川大学との共同開催
(SPOD開放プログラム)「授業について考えるランチセミナー」<合理的配慮の必要な学生に向けた授業づくり>が開催されました。
ご参加いただいた皆さま、大変ありがとうございました。

■開催日時
 第1回 2024年4月11日(木)12:05~12:50
 第2回 2024年4月18日(木)12:05~12:50

■参加者
 第1回 4月11日
  79名(Zoomによるオンライン)
 第2回 4月18日
  64名(Zoomによるオンライン)

■コーディネーター?講師?登壇者
  コーディネーター: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
 第1回 4月11日
  講 師: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)
 第2回 4月18日
  講 師: 杉田 郁代(高知大学学び創造センター)

■内容
 第1回
 最初に、講師より今回のテーマである大学教育における「合理的配慮」をとりまく状況について解説が行われた。すなわち、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が今年4月から施行され、大学をはじめとする全ての高等教育機関において、障害を持つ学生に対する合理的配慮が義務付けられることとなった。その状況を踏まえつつ、今回のセミナーではそれに加えて、障害のある学生にかかわらず、教室にいる全ての学生が学びにアクセスできる「ユニバーサルデザインな視点での授業づくり」を目指し、そのための工夫について紹介することが提示された。
 なお、本セミナーで用いる「ユニバーサルデザイン」という用語は、「自分の学びを調整して舵取りができる学習者を育てることを目的とする」(川俣, 2020)ものであり、単なる物理的支援にとどまらず、学生が自立して主体的に学習に臨めることを志向したものであることが示された。
 現在の障害を持つ学生の現状として、精神?発達の面で障害を持つ学生が多いことを示したうえで、そのような学生を含めた全ての学生が授業での学習に臨める方法について紹介がなされた。
 その方法として挙げられたのが、「授業で使用する教材や内容の事前伝達」「注意事項などの文書での伝達」「授業内容の録画?録音の許可」「学生へ質問や相談がしやすいよう声をかける等の配慮」である。授業資料を読み取ったりノートを取ったりすることが苦手な学生にとって、授業資料の事前配信や録画?録音の許可を行うことにより安心して学習を進め、自分なりの学習の仕方を確立することにつながる。ほかにも注意事項を文書化することで、内容を聞きもらすことなく困惑することができること、教員が学生にこまめに声をかけることでオフィスアワー等を十分に活用し、学生も安心感を持てるといった影響が生じるといった効果につながることが講師から紹介された。
 他にも、特に配慮を要する学生への対応の工夫として、「ノートをとる時間を確保する」「反復して学習できるよう授業の様子をTeamsやZoomで録画する」「板書よりもプレゼンテーションソフトを用いる」「グループワークに苦手意識を持つ学生のためにグループワーク全体の構造化と可視化を行う」「受講の流れやルールを固定して授業を実施する」といった工夫が挙げられた。
 その後は参加者から寄せられたコメントや質問に対して、活発な応答や議論が行われた。
参考文献:川俣 智路(2020)「学習支援から学習者の発達支援へ : UDLを支える足場的支援(Scaffolding)」『指導と評価』66(2), 9-11. 

 第2回
 今回は、前回寄せられたコメントに講師が回答を行う形で、合理的配慮とはどこまでを含むのか、合理的配慮として何が求められるのか、教員自身がすでに行っている教育的な工夫に加えてさらに配慮が必要なのか、どのようにユニバーサルデザインな授業を作っていけばよいのかといった問題を中心に、具体例に沿って検討が行われた。
 寄せられた質問の例としては、学生から直接行われた要求を認めてよいのか、教員は動画を作成しアップロードが求められるのか、合理的配慮によって生じるトラブル(学生が録画した授業動画をYouTube等にアップロードした場合等)への対応、合理的配慮と授業上のポリシー(あえて資料を配布しない等)との衝突が起こった場合はどうするのか、というものが挙げられた。これらについて、各大学内の関係部署への相談も含めたアドバイスや回答が行われた。

■成果と課題
 参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、第1回?第2回とも全ての回答者から肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。また、他の設問においても回答者の大半から肯定的な回答が得られた。

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果
   第1回(4月11日)   第2回(4月18日) 
とても当てはまる 25 (71.4%) 14 (63.6%)
どちらかといえば当てはまる 8 (22.9%) 8 (36.4%)
どちらかといえば当てはまらない     2 (5.7%) 0 (0%)
まったく当てはまらない 0 (0%) 0 (0%)
合 計 35 (100%) 22 (100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。

 自由記述においては、合理的配慮について理解を深めることができた、具体的な方法について知ることができた、という意見が寄せられたと同時に、自分以外にも合理的配慮の必要な学生への対応に直面している教員がいることが分かってよかったという意見が寄せられた。また、講師から丁寧なコメントをもらえたという内容も見られた。一方で授業について、学生にどこまで配慮をすればよいのか、より具体的な授業での取り組みについても見たいという意見もあった。
 今回から徳島大学?高知大学に加え香川大学も共催に加わったこともあり、SPOD圏内の幅広い大学から参加者が見られた。また、講師と参加者との丁寧な応答も好評であった。今回のテーマは現在多くの大学教員が直面しているテーマであり、ニーズは大変高いことが窺われた。来年2月には同様に障害を持つ学生に対する「キャリア支援」というテーマでセミナーを実施するため、今回寄せられたアンケート結果をフィードバックし、より充実したセミナーを実施したいと考える。

■アンケート回答結果
 第1回 (n=35)

図1.jpg
 第2回 (n=22)
図2.jpg 

■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)
写真1.png 
写真2.png 

ご不明な点などございましたら、下記アドレスもしくは、電話でお問合せください。
教育支援課教育企画係 メール:kykikakuk@tokushima-u.ac.jp 
           電 話:088-656-7686 内線(82)7125

徳島大学全学FD推進事業も紹介していますのでぜひご覧ください!
http://www.tokushima-u.ac.jp/highedu/reform/

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